講演会事例 馬も人も「相手を知ること」から始まる。パラ馬術・稲葉将選手が小学生に伝えたメッセージ

主催者
練馬区立南町小学校
講師
稲葉 将 選手(パラ馬術) SCSK株式会社
練馬区立南町小学校での人権お話会の様子「自分を大切に、相手を大切に」
開催日
  • 2025.11.27(木)
場所
  • 練馬区立南町小学校 体育館
対象
  • 小学3〜6年生
参加人数
  • 250名

自身の障害とパラ馬術との出会い

練馬区立南町小学校では、人権尊重教育推進校として毎年「人権お話会」を実施し、障害のある方を招いて話を聞く機会を設けています。今年は、パリ2024パラリンピックのパラ馬術で8位入賞を果たした稲葉将選手を招き、3〜6年生の児童を対象に講演会が開かれました。

稲葉選手は、先天性の脳性まひにより両下肢まひがあります。生まれた時には「将来は一生車いすの可能性が高い」と医師から説明を受けたこともありましたが、幼稚園から大学まで地元の学校でみんなと同じように過ごしてきたと振り返りました。

体を動かすことが好きで、小学2年生のころから少年野球にも挑戦しました。しかし、仲間と同じような練習ができない自分をつらく感じて、5年生で野球をあきらめたと言います。

転機となったのは6年生のころ。※ホースセラピーとの出会いでした。最初はリハビリ目的で馬と接していましたが、パラ馬術選手や関係者の方と関わるうちに「自分もいつかきれいに乗れたらいいな」という気持ちが芽生え、馬との関わりが、次第に生活の一部となっていったそうです。大学4年生でパラ馬術競技に本格的に挑戦し、選手としての歩みを写真や映像を交えて紹介しました。

※ホースセラピー・・・ホースセラピーは乗馬を通じて、あるいは馬の手入れ、馬の飼養管理、厩舎の管理、馬の観察などを通じて、障がい者の精神機能と運動機能を向上させ、社会復帰を早めるリハビリテーションの方法の一つ。(ホースセラピーねっとより抜粋)



パラ馬術の稲葉将選手が小学校の子どもたちに話している




自分から相手を知ろうとすることが、心を通わせる関係をつくる

パラ馬術は、パラリンピックで唯一、動物と一緒に行う競技です。決められたコースを馬と呼吸を合わせながら正確に、美しく回ることが求められます。音楽に合わせて演技する種目もあり、「人・馬・音楽」が一体となる瞬間が、この競技の特に大きな魅力です。

一方で、馬にも気分や体調があります。思い通りにいかない練習も多く、「そういうときがあるからこそ、うまくいったときの喜びは本当に大きいんです」と稲葉選手は話します。

その背景には、長く共に過ごす中で築かれる信頼関係があります。厩舎の掃除やブラッシング、餌やり、遠征先での体調管理など、馬に乗る時間以外にも共に過ごす時間が多く、そうした積み重ねが信頼へとつながっていきます。

「馬は言葉を話せません。だからこそ『何を考えているのか』『何をして欲しいのか』と、自分から相手のことを知ろうとしながら接するよう心がけています」と述べ、こうした姿勢は学校生活にも通じると伝えました。

さらに、「できる・できないで終わらせず、どうしたらできるかを考えること。そして、相手の気持ちを想像し、自分から歩み寄ることが大切です」と、相手のことを想う大切さを強調しました。

こうしたメッセージは、子どもたちの心にも強く届いたようでした。

質疑応答では、「どこを撫でると喜ぶんですか?」「馬とけんかしたことは?」「障害(脳性まひ)があって一番大変だったことは?」といった質問が相次ぎました。稲葉選手は丁寧に答えながら、馬への思いや、日々の取り組みで大切にしていることについて話しました。

子どもたちからは、「自分も目標をもって頑張りたい」「できるかできないかではなく、どうすればうまくいくかを考えること。そして、相手を知ろうとすることを、自分もやっていきたい」など、前向きな声が多く聞かれました。





パラ馬術の稲葉将選手が「馬との信頼関係」の大切さを話している




今日伝えたことが、子どもたちのこれからにつながってほしい

講演では、子どもたちが前向きに話を聞いてくれて、とても嬉しかったです。質問もたくさん出て、中には障害について深く考えてくれた子もいて驚きました。

パラ馬術は、動物と一緒に行う唯一の競技です。馬には気分や性格があって、思うようにいかない日もありますが、だからこそ心が通ったと感じられたときの達成感は大きいです。これからも長く選手として活動して、世界中の大会で良い成績を上げていきたいです。

競技の裏側には、馬との出会いから練習、日々のコミュニケーションまで、関係を少しずつ築いていく時間があります。今日の話が、子どもたちにとって何かのきっかけになってくれたら嬉しいです。

パラ馬術の稲葉将選手が笑顔でインタビューに応えている




依頼者コメント

人権お話会の講師にパラアスリートの方をお招きしたいと考え、依頼しました。ご講演では、人権教育と関連付けて、ご自身の障がいや競技の魅力についてお話していただきました。さらに、会の最後に稲葉選手が、こどもたちからの質問に一つ一つ丁寧に答えてくださいました。その姿から、一人一人を大切にすることの大切さを改めて学ばせていただきました。ありがとうございました。

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