講演会事例 きこえなくても伝えられる!デフアスリートと向き合う指導者の姿勢を、藤川彩夏さんが語る

主催者
中央区区民部スポーツ課
講師
藤川彩夏氏(スタッフ/デフ水泳)
藤川彩夏さんが参加者に向かって話している
開催日
  • 2025.07.30(水)
場所
  • 中央区役所(8階大会議室)
対象
  • スポーツ指導者、スポーツ指導に関心のある方
参加人数
  • 33人

中央区役所で、デフスポーツの指導に関心がある方向けに開催

令和7年度「スポーツ指導者養成セミナー フォロー研修」が中央区役所で開催され、デフアスリートと向き合う指導者の役割についての講義が行われました。講師には、夏季デフリンピックに3度出場し、2017年には銅メダルを獲得するなどの実績を持つ元デフ水泳日本代表で、現在は東京で会社員として働きながら、デフ水泳のコーチやスタッフとしても活躍する藤川彩夏さんが登壇しました。



藤川彩夏さんが手話で話している




伝える工夫を諦めない! 選手時代からの悩み克服を語る

長野県で生まれた藤川さんがデフ水泳の選手として活動していた当初、まず直面したのが「自分の実力レベルや練習環境についての理解の不足」でした。地方ではデフアスリートの仲間が少なく、情報やサポートも限られていたといいます。全国大会への参加機会も限られる中、自ら積極的に情報を集め、コーチや先輩のつてを頼りに、より自分に合った練習環境を探し続けました。

また、「競技ルールの理解」の壁にもぶつかりました。大会に出場した際は、デフアスリートに対して、スタート合図や失格理由など必要な情報の伝達が行き届いておらず、戸惑うことも多かったそうです。藤川さんは自らが聴覚障害者であることを主催者や審判長に伝えたうえで、必要な配慮を求めるとともに、動画やメモを活用して正しい情報を得る工夫を重ねてきました。

さらに、「コミュニケーション」も大きな課題でした。コーチや仲間との意思疎通が難しい中、ホワイトボードや水泳記録ノートを活用し、さらに簡単な手話や指文字を取り入れてもらうことで、一歩ずつ関係を築いていきました。そうすることで孤独に陥らずに周囲の理解も広がったといいます。「障害を隠すのではなく、伝える、助け合える環境づくりが大切」と強調しました。

コーチとなった今は、「自分の経験や知識をどう伝えるか」「選手とどう向き合うか」が新たな悩みとのこと。デフアスリートは手話ができる人・できない人など多様であり、正しい情報を全員に平等に伝える工夫が不可欠です。そこで、LINEやメモなどのアプリ、個別メールなどを活用し、選手ごとに伝え方を工夫しています。指導者自身が手話や指文字を学び、選手とともに成長する姿勢が信頼関係の礎になると語り、「伝える工夫を惜しまないことで、デフアスリートの力を引き出せる」と、実体験をもとに参加者に呼びかけました。

藤川さんの言葉からは、伝えることを諦めず、互いの個性や課題に寄り添うことの大切さが伝わってきます。デフアスリートの指導に限らず、あらゆる現場で活きる教えが詰まった講義となりました。





参加者が藤川彩夏さんの話を聞いている、会場全体の様子




東京2025デフリンピックに期待していること

私は4歳からずっと水泳を続けてきました。当時はロールモデルとなるデフアスリートがほとんどおらず、「本当に活動している人がいるのかな」と思ったほどでしたが、情報交換を通じて、人とのつながりが広がっていきました。

今は水泳だけでなく、卓球や陸上など様々な競技で活躍するデフアスリートが増え、憧れの存在やロールモデルが大勢いることを嬉しく感じています。

デフリンピックが東京で開催されることには、大きな意義と期待を感じています。きこえない・きこえにくい人が社会で活躍していることを多くの人に知ってもらえる絶好の機会になるでしょう。以前はデフスポーツの認知度が低く、大会に出場するための費用を自分たちで捻出しなければならない苦しい状況もありました。しかし、デフアスリートという言葉が少しずつ広まり、募金など応援の輪も広がっています。東京2025デフリンピックを通じて、社会全体でデフスポーツについて考える機会になればと願っています。

海外からも多くの選手が集まるデフリンピックでは、手話通訳や字幕など視覚的な情報が充実しているのも特徴です。こうした魅力にもぜひ注目し、皆さんと一緒に盛り上げていきたいです。



インタビュー中、笑顔の藤川彩夏さん




依頼者コメント

デフリンピックの機運醸成やスポーツ指導者の資質向上を目的にスポーツ指導者養成セミナーフォロー研修の講師として藤川さんにご依頼させていただきました。参加者からも「デフリンピックについて知れてよかった」、「自分の知らない世界のことを知れてよかった」など肯定的な意見・感想が多く見られました。参加者にとって非常に有意義な講義になったと思います。

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