- 実施事例
- パラリンピック出場の森宏明選手による講演会・車いすの体験会
講演会/体験会事例 パラリンピック出場の森宏明選手による講演会・車いすの体験会
- 主催者
- 文京区立柳町育成室
- 講師
- 森宏明選手(パラノルディックスキー・車いすソフトボール)

- 開催日
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- 2024.10.01(火)
- 場所
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- 文京区立礫川小学校
- 対象
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- 文京区立柳町育成室・アクティ(文京区が行う学童保育及び放課後全児童向け事業)
- 参加人数
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- 約50名
チャレンジを続けたからこそ、今が楽しい
「猛スピードで走ってきた車と壁の間に挟まれて、その瞬間に足が取れたぐらいの衝撃で、痛いというよりも熱いとの感覚でした。衝突箇所がもう少し上だったら、命がなくなっていたでしょうね」
森選手は講演会で、野球に熱中していた高校2年生のときに遭った事故の状況を、義足を実際に見せながら赤裸々に話しました。子どもたちからは「えっ!」「怖い」などの言葉が自然と出ていました。
「最初は悲しかったし落ち込みました」と森選手。しかし、「以前のように友だちと遊びたい」との思いやまわりからのサポートもあり、治療やリハビリに懸命に取り組み、半年後には高校に復学します。
その後は大学に進学しパラノルディックスキー(クロスカントリー)を始めると、2022年の北京冬季パラリンピックに出場。次回2026年のミラノ・コルティナ冬季パラリンピック出場も目指しています。
森選手は「3つのチャレンジをしてきた」と、子どもたちに伝えました。1つ目はリハビリを頑張ったこと。2つ目は、パラノルディックスキーにチャレンジしたこと。3つ目は、大会や練習拠点となる海外での暮らしです。
「最初は不安でしたし、正直、やりたくないと思っていました。でも勇気を出してチャレンジしてみた結果、今はどれも楽しいです。皆さんもぜひ、まずはチャレンジしてみてください」
森選手が雪上を滑っている動画も含め、パラリンピックやパラノルディックスキーはどんなものかも詳しく紹介。子どもたちは前のめりになり「森選手、速っ!」「抜かせー!」など、興奮していました。
最後は一人ひとりの子どもたちが義足に触れる体験会も行いました。義足の重さを確かめたり、靴の部分を気にしたり、足とのジョイント部分について森選手に聞くなど、多くの子どもたちが興味津々でした。


押す側の配慮を学ぶことができた「車いす体験会」
車いす体験会では、子どもたちは乗る前から大変興味を持っている様子で、「早く乗りたい!」との声があちらこちらから聞かれました。
2人1組となり、まずはゆっくりと車いすを押す体験からスタート。最初は恐る恐るだった子どもたちも、次第に押すコツや配慮を感じ取ったようで、実際に車いすを押す機会があった際には、今日の体験が役立つのではないか、と感じました。
自分の力で車いすを漕ぐステップに移ると、先ほどの緊張からは一転、みな笑顔で純粋に車いすに乗ることを楽しんでいました。実際、「車いすに乗るのは初めてだったけどちょー楽しかった!」「また乗ってみたい」との声が聞かれました。

生きるための“力強さ”を子どもたちに伝えたい
勉強以外にも伝えておくべきことがあるとの思いから、このようなイベントを定期的に開催しています。野球を奪われたにも関わらずチャレンジを続け、力強く別の道で生きている。森選手の力強さや生き方を子どもたちに知ってもらいたい、自分たちでも実践してもらいたい。このように思い、お声がけしました。実際、今の子どもたちは受験など、日々色々な壁にぶち当たっていますからね。
とはいっても、まずはイベントを楽しんでもらう。パラスポーツならびに森選手という、普段接することが少ないけれど、これからの人生で出会うであろう、そのような人と出会った際に、配慮ができるきっかけになればとも思っています。
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自分の壁や乗り越える術を考えるきっかけに
イベント終了後は森選手、主催者からメッセージをいただきました。
子どもは疑問などをストレートに聞きますが、そのようなアクションが大事だと僕は考えていますし、気になることはどんどん聞いてください。大人たちはそのような子どものアクションを止めるのではなく、見守ってくださればと思います。
そして、障害のある人に会った際にはイベントで聞いたことなどを参考に、「自分には何もできない」「声をかけたら悪いかな」と思うのではなく、まずは積極的に声をかけてください。僕もそのような友だちのサポートで励まされたからです。これは障害のある人に限らず、友だちが悩んでいるときも同じです。
障害は「害」ではなく、人生の中でひとつの壁ができたと考えています。僕の場合は足を失ったことですが、人それぞれあるでしょう。僕が壁を乗り超えたように、皆さんもそれぞれの壁をどうすれば乗り越えられるのか。今回のイベントをきっかけに、考えてもらえればと思います。