講演会事例 東京パラリンピック銀メダリストの水泳・富田宇宙選手の講演会

主催者
成蹊大学ボランティア支援センター
講師
富田宇宙選手(水泳)
スクリーンリーダーを使ってパソコンを操作し、講演会を行う富田選手
開催日
  • 2023.11.02(木)
場所
  • 成蹊大学
対象
  • 成蹊大学学生
参加人数
  • 50名

大学の講義を受けているような知識が詰まった講演会

2023年10月22日から28日に中国で行われていた杭州アジアパラ競技大会で金メダル2個を含む4個のメダルを獲得したパラ水泳の冨田宇宙選手が今回の講師。大会が閉幕後すぐの11月2日に「ダイバーシティー・フローマインド~みんなの多様性を理解すれば、あなたの“強み”が見つかる~」という題名で成蹊大学にて講演会を行いました。

講演会には学生が約50名集まり、その中には競泳を始めとする水泳競技に関わる生徒も多く参加されていました。登壇後、視覚に障害のある富田選手はパソコンから伸びたイヤホンを耳に装着。パソコン上の文字を音声に変換し、それを聞きながらスライドショーを進めていました。

自己紹介から始まり、①多様性を認める、②自分の強みを受け入れる、③ライフスキルを磨く、という3ステップで、より自分らしく生きていくための考え方について解説。障害が進行していった時のこと、パラスポーツを開始した理由、東京パラリンピックにたどり着くまでの苦労など、富田選手が歩んできた道のりで感じたことなども織り込みながら、ジョークを交えての研究と経験に基づく話に、学生はそれぞれに興味深そうにメモを取りながら話を聴いていました。最後に質問コーナーを設け、約2時間の講演会はあっという間に終了。大学の講義さながらの講演会に、最後は富田選手へ感謝の意味を込めた大きな拍手が送られました。



学生からの色んな質問にも富田選手は笑顔で回答




富田選手とのQ&Aを紹介!

Q ある日を境に見えなくなったんですか?
A 人によって差がありますが、私は見えなくなるまでに10年ちょっとかかりました。久しぶりの場所に行こうとしてうまく歩けずに道に迷って着けなかった時などに、視覚障害が進行していることを自覚するんです。なにかができなくなる度に「もう一生できないんだな」という事実が押し寄せて、幾度となく苦しい思いをしてきました。

Q 視力が段々落ちていく中で前を向こうと思うきっかけはありましたか?
A 苦しいところから立ち直ったという感覚はなく、できないことが増えていく苦しみに徐々に慣れていった、という感じです。僕は障害と向き合うために「一日一生」という言葉を座右の銘にしています。見えなくなる将来を考えながら生きるのは苦しいので、まずは今日一日だけに焦点をあて、一生懸命に楽しく生きよう、という心がけです。それを日々繰り返すことで人生が少しずつ良いものになっていくと考えています。夢や目標は大切ですが、同時に未来にとらわれ過ぎないことも重要なんです。

Q 障害のある方と実際に遭遇した時に、どのように声をかければ良いでしょうか。
A 正解はない、ということを理解することが大切です。障害に限らず、自身のネガティブな要素に対するとらえ方って人それぞれですよね。僕みたいに自分の障害を受け入れていて、ネタにしているような人もいれば、聞かれるだけで嫌な思いをする人もいます。その時々に相手をしっかり観察することが大事。これってどんな人とコミュニケーションする場合にも言えることなんですけどね。

Q 五感のうちどれかを失うと他の感覚が発達することはあるんですか?
A マンガの見過ぎです(笑)…というのは冗談ですが。大体14歳くらいまでに視覚を大幅に失うと、三半規管や触覚などの神経が人並み以上に発達する、と言われています。東京パラリンピックで水泳競技で金メダルを獲った木村敬一君は、生まれつき見えないんですけど、僕と二人で歩いていて、彼に道案内してもらうことがあります。交差点など壁が途切れていることが空気の流れで分かったり、扉が開いているのを三半規管で感じ取ったりできるみたいです。でも僕は高校時代から徐々に見えなくなっていったので、何の能力もありません(笑)



講演会後も笑顔で学生と気さくにおしゃべり




講師コメント

東京パラリンピックで獲得した銀メダルを多くの学生が触って体感した

今回は時間を2時間とたくさんいただきました。共生社会の実現に向けて、というテーマでしたので、僕なりに、皆さんが多様性を受け入れるにはどうしたらよいのか、具体的なノウハウやメソッドを盛り込んでお話しました。大学生の皆さんに少しでも学びがある時間になっていたら嬉しいですし、“あなたらしさ”“自分らしさ”を大切にできるような人になってもらえたらと思います。

日本代表選手とのマッチングで、充実した講演会になりました

本センターでは複数年かけてあるテーマをかかげ、ボランティア活動の推進等に努めています。2022年度~2024年度の3年間は、「共生社会の実現」をテーマに成蹊D&Iプロジェクトとして「障害者」に絞った取組を行っています。テーマに取り組み2年目となる2023年度は、パラアスリートの体験会・講演会を中心に企画を検討していました。その折、東京パラくるさんで、体験者・講演者をご紹介いただけることを知り依頼をさせていただきました。体験会(講演会含む)と講演会を2本実施しました。講演会では水泳のメダリストの方でしたが、体験を踏まえたとても実践的で説得力のあるお話で、とても参加者を含めスタッフも感動する内容でした。ほんとうにいい体験会・講演会ができたと感謝しています。ありがとうございました。

※体験会については、別途掲載

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